熱中時代 コーチ編

『熱中時代 コーチ編』

第一話「現場に帰ってきた男」

その熱い男は、どこにでもあるような平凡な地方の部活動のチームで熱弁を揮っている。日々何とはなしにスポーツに取り組んでいる生徒たちに「そんなんでいいのか」と問いかけている。

別にいいんじゃないと思うのだが、この男「まあ自分の人生だからそのうち気づけばいいさ」などという悠長なことで済まされる人間ではない。しつこいのである。

「やればできる」と信じて疑わない性質から何とか気づかせたいと考え、いつもどうすれば真剣に生きてみようと思うようになるかを模索している。

職業ストレングスコーチ。かつて教職に身をおいていたことがあるのだが現場の体勢に矛盾を感じ、組織から離れた。民間の仕事に身をおきながら自分の進むべき道を思案してきたが、今は民間の立場として仕事を通じて学校教育に関わっている。形を変えて再び現場に帰ってきたのである。

「弱きを助け、強きを挫く男」だと自分では信じている。(人には反対だと言われる)常に逆境に身をおきたいと考えている。決して守りのチームはサポートしない。常にアグレッシブを求めるからである。チャレンジすることに生きる意味を見出している。

【チャレンジ】には【情熱】が不可欠である。常に自分を追い込みながら情熱の炎を燃え上がらせている。それがウザイと思われることもよくあるが、そんなことでへこむ男ではない。お構いなしに自分の道を突き進んでいる。

その男の信条は「強くなれ!」である。この男にとって一番の喜びは、ダメだ、無理だと思われているものが奇跡の逆転劇を遂げること。これ以上に人生でファンタスティックなことは無いと考えている。

この男にとってそのような奇跡のストーリーはどんな分野でも良い、人でも犬でも馬でもサルでも何でも良いのである。努力が報われたという事実にエネルギーを満たされ、明日への活力にしている。

しかし現実はというと、いかなる情熱も、その程度の炎では山火事どころかマッチの火ぐらいのもの。この世の中で何かを変えようとするのは並大抵ではない。この全体的なテンションの低さ。大人たちが燃えていないから子どもたちが燃えるはずがない。

-べつに-嫌いな言葉のトップファイブに入る返事である。どこでもそうだと思うが多くの場合、現状を変えたいと思う強い気持ちが湧いてこない。自分の現状がどうであるか考えたこともないのかもしれない。

このままではいけない、自分を変えてみよう、何かをしなければならないと思っている人間はどれだけいるのだろうか。そう思える日々を過ごしている。

しかしそこはこの男愚痴だけでは終わらない。自分の周りだけでも燃やしてやると思っている。寝ている子を起したいと考えているし、豪雨の後、地を固めたいと思う非常に危ない人間である。

戦争や天災などの非常時にはその力を如何なく発揮できるが、平和な世の中には波風を立て極めて迷惑な人材である。正に僕の先生は嵐のないところに嵐を巻き起こすのである。人によっては非常にありがた迷惑な存在なのである。 ~つづく~
    
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by stagecoach | 2006-12-01 22:14
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